はじめて「モラハラ」という言葉が浮かんだ日
その夜もまた、夫と口論になりました。
きっかけは、ほんの些細なこと。
けれど、夫の“注意”は、いつのまにか私を責める言葉に変わっていきました。
「なんでそんなこともわからないの?」
「アホか」
何も言い返せなかった私は、ただ心を閉ざしました。
そのとき、ふと頭に浮かんだ言葉がありました。
「……モラハラって、こういうことなのかな?」
スマホを握りしめて震えた手
リビングの電気を消し、夫のいびきが響く暗い部屋で、
私はこっそりとスマホを開きました。
「モラハラ 特徴」
「転勤妻 モラハラ」
「自分が悪い モラハラ」
震える手で、次々と検索ワードを打ち込んでいく。
そして目に飛び込んできたのは、心当たりのある言葉ばかりでした。
- 人格否定
- 沈黙の圧力
- 罪悪感を抱かせる言動
- 否定的な言葉で相手の自信を奪う
怖くなって、スマホをそっと閉じました。
「まさかうちが、そんなわけないよね?」
私はモラハラの被害者?
いや、違う。そんなはずない。
夫はただ、少し怒りっぽいだけ。真面目なだけ。
私が神経質すぎるだけ。
――そう言い聞かせようとする自分がいました。
でも、他人の体験談を読むうちに、胸が締めつけられていったんです。
「これ、私のことじゃない?」
まるで自分の人生を誰かが代わりに書いたような、そんな感覚でした。
気づいた瞬間から、元には戻れなかった
「モラハラかもしれない」と気づいてしまったら、もう以前のようには戻れませんでした。
“ただの夫婦喧嘩”だと思っていたこと、
“私の我慢が足りないだけ”と思っていたこと。
どれも本当は、違ったんだと。
私が感じていた苦しさには、ちゃんと理由があったんだと。
そう思えるだけで、ほんの少しだけ、呼吸が楽になった気がしました。
あの検索の夜から、私の心は少しずつ動き出した
その夜を境に、すぐに何かが変わったわけではありません。
でも、“おかしいかもしれない”と感じたあの瞬間が、
私にとっては確かな第一歩でした。
自分の感情に名前をつけたあの夜。
私は、夫との関係が対等ではなかったこと、
そして“愛されている”と思い込もうとしていただけの自分に、
ようやく気づいたのです。
あの夜、私は弱かったかもしれない。
でも、同時にとても勇敢でもあった。
“おかしい”と思う感覚は、私自身を守るための大切な本能だったんだと、
今の私は、はっきり言えます。
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