私はずっと願っていた。
「ありのままの気持ちを、話してほしい」と。
強がりでも、言い訳でも、取り繕った言葉でもなくて――
本当はどう思っていたのか、何に傷ついていたのか、何を恐れていたのか。
そのままを伝えてほしかった。
でも、彼の言葉はいつも遠回しで、
一見穏やかだけど、核心に触れないような説明だった。
私が「違和感」を覚えるたびに、
「そんなつもりはなかった」と言い、「自分は悪気はなかった」と返される。
たとえ私がどれだけ傷ついたと伝えても、
その傷の重さに、彼の言葉が届くことはなかった。
私が欲しかったのは、「正しさ」ではなく「理解」だった。
思いやりや、弱さを見せてくれること、
その人自身の本音を、私にだけは見せてほしかった。
なぜ「ありのまま」を話してくれなかったのか。
私がそれを受け止められないと思われていたのか、
それとも、彼自身が自分の本音と向き合えなかったのか。
わからないまま、私はただ祈っていた。
「怖くても、格好悪くても、いい。あなたの言葉で語ってほしい」と。
もう届かない願いかもしれない。
それでも私は、いまも心のどこかで願ってしまう。
“あなた自身の声で、話してほしい”
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