――心の悲鳴に耳を澄ませた瞬間――
あの日、特別なきっかけがあったわけじゃなかった。
ただ、ふとした会話の中で、心が重く沈んでいくのを感じた。
「なんで、こんなに疲れるんだろう?」
笑顔でいようとすればするほど、苦しくなっていった。
いつから「しんどさ」が日常になっていたのか
最初は、私が悪いのかもしれないと思っていた。
相手の機嫌をうかがい、顔色を見て、言葉を選びながら話す日々。
ちょっとしたことで空気が変わるから、いつも緊張していた。
「どうしてそんな言い方するの?」
「また怒らせちゃったかな…」
そんな不安が、毎日のように胸をよぎっていた。
子どもと話すことすら、気を使うようになった
気づけば、子どもと何気ない会話をしているだけで、夫の顔色が気になるようになっていた。
私の言い方がおかしいと思われないか。
楽しそうにしているのを見て、否定されたり、批判されたりするのではないか。
夫の前では、子どもと自然に話せなくなっていた。
笑い合うことすら、許されていないような気がして――
そのうち私は、夫が子どもと楽しそうに話している姿にすら、イライラするようになった。
彼の笑い声を聞くたび、胸の奥がざわついた。
なんで私を叱りつけてきたあなたが、そんなに楽しそうにしているの。
どうして、あなたばかり“いい父親”の顔でいられるの――
私の心はぐちゃぐちゃなのに、楽しそうに子供と楽しそうに過ごしているだけで、許せなかった。
ただ隣にいるだけで、心がすり減る
沈黙が苦痛だった。
一緒にいるのに、孤独だった。
「家に帰りたくない」と感じるようになったとき、自分の気持ちをごまかすのをやめた。
「一緒にいるのが、もうしんどい」
そう思ってしまった自分を、責めるのをやめた。
心が教えてくれた「限界」のサイン
関係は、努力だけでは保てない。
一方通行の思いやりは、やがて自分を壊してしまう。
私が私らしくいられる場所を、少しずつ探しはじめた。
あの日の気づきは、決して悲しいだけの出来事ではなかった――
自分の心に、ようやく正直になれた日だったのだから。
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