MENU

【第1章|はじまりの違和感】「ありがとう」「ごめんね」が言えない人と暮らすこと

目次

「いちいち、そういうのはいらない」と言われた日

結婚して間もないある日。

食事の準備をしていた私に、夫が食器を出してくれた。

反射的に「ありがとう」と口にした瞬間、返ってきたのはーー

「いちいち、そういうのはいらない」

少しでも感謝の気持ちを伝えたくて言った言葉だったのに、その一言で空気が凍りました。

なんで、ありがとうがダメなの?無言で受け取ればよかったの?

何かしてもらったら「ありがとう」って言うと、小さい頃教わらなかったっけ?

どうしてこれを否定されるんだろう、と疑問でいっぱいになった。

「ちょっとしたことでも、ありがとうって言いたいし、言って欲しい」

そう伝えたけれど、夫から返ってきた言葉は

「そんなのはいちいち要らない」でした。

私は言葉を飲み込み、もういいやという気持ちで、そのまま食器を受け取りました。

「思ってもないことは言えない」

夫婦なのに、家庭の中で「ありがとう」という言葉を使うことすら許されなかった。

コミュニケーションを取るなと言われているようだ。毎日顔を合わせるのが夫しかいない生活で、夫婦がこんな関係でいることが悲しかった。

あるとき、私は勇気を出して言ってみました。

「何かしてくれたら、ありがとうって言ってもらえると嬉しいな」

すると、彼は静かに、でもはっきりと言いました。

「思ってもいないことは言えない」

その言葉を聞いた瞬間、夫は何かしてあげても感謝の気持ちなんて感じてもいなかったんだと知って、胸の奥がズンと痛んだ気がした。

私はもう「ありがとうと言ってほしい」とお願いすることをやめました。

夫は、私に感謝していない。その事実に向き合うことが辛くなったのです。

会話が拒絶されるということ

それでも、話をしようとしたことは何度もありました。

まだ新婚だった私は、夫との会話を楽しみたいと思っていたからです。

けれど、話し始めると返ってくるのはいつも同じ。

「もうわかったから、それ以上話さなくていい」

続けてこうも言いました。

「俺はちょっと相手の話を聞くだけで、相手が何を話そうとするかわかるんだよね。」

そういう夫の表情は、どこか誇らしげでもあった。

私は「話がしたい」と言っていた。

それでも、自分はもうわかるからいいと言って、私の気持ちを理解しようともしなかった。

それでも話しをしようとすれば、彼は頷きをわざと早くして、私が話終わるまでイライラする様子でいた。

まるで、私の話が“不要なノイズ”であるかのように。

私は話すことで、お互いの価値観を共有したかった。

話すことでコミュニケーションをとりたかった。

それなのに、夫から受け取ったのは拒絶だった。

夫婦なのに、言葉が届かない

夫婦なのに、「ありがとう」も「ごめんね」も言えない。

気持ちを伝えようとするたびに拒まれ、

言葉を重ねようとするたびに遮られる。

もう結婚して8年が経つけれど、夫とコミュニケーションが上手く取れないままここまで来てしまいました。

未だ、何が好きなのか、どんな価値観を持っているかはお互いに知りません。

ただただ一緒にいる時は、無言か不満を言われるだけ。

それが、私たちの始まりでした。

「ありがとう」が当たり前じゃない理由とは

今、私は2人の子を育てています。

子どもたちに読み聞かせしている絵本には、こう書いてあります。

「なにかしてもらったら、ありがとうっていおうね」

その一文を読むたびに、胸が苦しくなる。

なぜなら、子どもに伝えているこの感覚が、夫との世界では通じないから。

夫はもしかしたら、「感謝を伝える」という教育を幼少期に受けてこなかったのかもしれない。

彼は、こうも言っていた。

「義父から幼少期に『やられたらやり返せ』と教わってきた」と。

相手に殴られたら、殴り返す。

——それが彼にとっての正しさだった。

想像でしかないけれど、きっと優しさを送り合うことを知らず、負けないでいることを教えられてきたのだと思う。

だから「ありがとう」という言葉が、どれだけ心を温めるかを知らないまま大人になったのかもしれない。

たった1人の意見に惑わされないで

「ありがとう」「ごめん」という言葉が許されない世界が夫と私の間にはありました。

私の中で、何かしてもらったら「ありがとう」という言葉を言うことは常識だった。

それでも、夫から強く言われるとそれ以上言えなかった。自分が違うのかな?とすら考えました。

今になってわかるようになった。そんな、たった1人の言葉で自分を変えてはいけない。

できるだけ周りを巻き込んで、自分の考えを大事にしてほしい。

私が通っていた心療内科の先生からはこう言われました。

「できるだけ多くの人と話をして、たくさんの”ものさし”を集めてほしい。

自分と、夫だけでなく、色々な人の感覚を知ることで、客観的に見ることができるから」

と。

夫婦関係は2人の世界だから、周りが見えなくなりがちです。

今もしもあの時の私の様に、パートナーの言葉で悲しい思いをしていたら、孤立せずできるだけ周りの人に、意見を聞いて欲しい。

そう思っています。

相談窓口一覧(日本国内)

📞 DV・モラハラ全般

• DV相談+(プラス)
電話:0120-279-889(24時間/通話無料)
SNS相談:公式サイトからLINE・メール可
https://soudanplus.jp/

• 配偶者暴力相談支援センター
最寄りのセンターは各都道府県に設置(DV相談+からも案内可)
生活の安全確保や一時保護などの支援も可能

📞 心の不調・つらさ全般

• いのちの電話
電話:0570-783-556(10:00〜22:00)
夜間専用:0570-783-110(22:00〜翌8:00)
https://www.inochinodenwa.org/

• よりそいホットライン(悩み全般・多言語対応)
電話:0120-279-338(24時間/通話無料)
音声案内後「2」を押すと女性専用窓口へ
https://www.since2011.net/yorisoi/

📞 子どもが関わる場合

• 児童相談所虐待対応ダイヤル
電話:189(24時間/通話無料)
子どもへの暴力・ネグレクトなどを匿名で相談可能

📞 法的な助言が必要なとき

• 法テラス(日本司法支援センター)
電話:0570-078374(平日9:00〜21:00/土曜9:00〜17:00)
経済的に厳しい場合、無料法律相談や弁護士費用の立替も可能
https://www.houterasu.or.jp/

💡 ポイント

  • 電話が難しい場合は、SNS・メール相談を選ぶ
  • 自治体の公式サイトでも地域ごとの支援先が見つかる
  • 命や安全に危険があるときは、迷わず110番へ
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次