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【第1章|はじまりの違和感】声を上げられなかった理由

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おかしいと思っても、言葉にできなかった

私はずっと、声をあげられなかった。

おかしいと思っていたのに、何も言えなかった。

「ありがとう」も「ごめんね」も言えない人と暮らしながら、

苦しいと感じることがあっても、それを「苦しい」と言葉にすることができなかった。

知らない土地と、誰にも頼れなかった日々

結婚してすぐ、私は夫の転勤にあわせて知らない土地に引っ越した。

誰も知り合いがいない場所。頼れる人もいない、慣れない環境。

その孤独が、最初の沈黙の理由だったと思う。

親には心配をかけたくなかった。

「大丈夫」と言っていたかったし、自分でも「大丈夫だ」と思い込みたかった。

だから、ほんの些細な違和感すらも飲み込んで、黙って過ごしていた。

少しずつ積もっていった「違和感」

それでも、少しずつ積み重なるものはあった。

強い言い方。小さな無視。否定的な言葉。

私が話そうとすれば遮られ、提案すれば否定された。

でも、「これくらい、どこにでもあることかもしれない」──そう思い込もうとした。

誰かに話すことができなかった

ようやく友人に会えるタイミングがきたころには、

夫の言動があまりにもひどくなっていた。

けれど、私はそのすべてを話すことができなかった。

「引かれてしまうかもしれない」

「信じてもらえなかったらどうしよう」

「私の方が悪いって思われるかもしれない」

そんな不安が、喉を塞いでいた。

「モラハラ」とはっきり認識できなかった理由

そして何より、当時の私はまだ「これはモラハラなんだ」と、はっきり認識できていなかった。

彼の言葉が酷いと感じても、

「私の捉え方が大げさなのかもしれない」

「感情的になっている私が悪いのかもしれない」

──いつのまにか、自分の感覚を否定するクセがついていた。

気づいていた。でも、認めたくなかった

本当は、気づいていた。

傷ついていたし、泣いていた。

でも、認めてしまったら、自分の人生の選択が間違っていたことになる気がして。

間違いを認めるのが怖くて、私は沈黙を選び続けた。

「声をあげなかった」のではなく「あげられなかった」

だから私は、「声をあげなかった」のではなく、

「あげられなかった」んだと思う。

誰かを守ろうとして、自分を責めて、

そして、自分自身を疑って。

今なら、あの時の私にこう言ってあげたい。

「それは間違ってるって、言ってよかったんだよ」

「感じたことを、誰かに話してよかったんだよ」

「あなたの感覚は、ちゃんと正しかったんだよ」って。

次回予告|産後の変化と、深まる心の距離

次回は、産後の変化と、深まる心の距離について書いていきます。

「変わってほしい」と願いながら、それでも変わらなかった現実と、

その中で私が自分をどう守ったかを記録していきたいと思います。

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