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【第1章|はじまりの違和感】「言い訳するな」の一言から始まった、支配の構図

話す自由を選ばれて
目次

結婚してすぐに感じた、言葉のプレッシャー

結婚して間もない頃、夫にこう言われました。

「でも、とか、だって、とか言うなよ。言い訳するな」

「普通はこうする、なんて言わないで」

私は驚きながらも、「そうか、気をつけなきゃいけないんだ」と思いました。

結婚したばかりだし、お互いに歩み寄っていく必要があるのだと信じていたからです。

それからは、自分の話し方にすごく気をつけるようになりました。

「これは言い訳に聞こえないかな?」「“普通”って言葉はやめよう」――そんなふうに、話す前に何度も頭の中で言葉を選ぶようになりました。

でも、その“気をつける努力”は、私だけがしていたものでした。

夫は変わらず、自分の主張を強く通し、私が少しでも反論めいたことを言えば、すぐに「それは違う」「おかしい」と言いました。

私が口をつぐむことで、夫との会話は静かにはなったけれど、心の中ではいつもプレッシャーを感じていました。

「また否定されるかもしれない」「話すのが怖い」と、少しずつ、自分の言葉を手放していったのです。

「おかしい」「間違ってる」と否定され続けて

私がどんなに気をつけて話しても、夫はすぐに「おかしいよ」「間違ってる」と言ってきました。

意見を伝えたつもりが、「何言ってるの?」「そういう考え方はおかしい」と返される。

それは、内容をすり合わせる対話ではなく、私の考えそのものを否定するやり取りでした。

ときには、「そんなふうに思うなんて、成長しないな」とまで言われたこともあります。

自分の考えを話すたび、人格まで否定されているような気がして、どんどん言葉を失っていきました。

それでも私は、「私の説明が下手だったのかな」「もっと冷静に話せばよかったのかな」と、自分のせいだと考えました。

夫のことを信じたかったし、関係を壊したくなかったからです。

でも、気づけば私は、自分の意見を伝えることをあきらめるようになっていました。

「どうせまた否定される」「説明してもわかってもらえない」

そう思ううちに、心の中に小さなあきらめと不安が積もっていったのです。

反論を封じられた関係は、支配のはじまりだった

「やめて」と伝えても、夫の態度は変わりませんでした。

私は否定されるのが嫌で、反論を控えるようになりましたが、夫は自分の意見を一方的に押しつけ続けました。

気づけば、私が何か言えば夫が否定し、私が黙れば「なぜ黙っている」と責められる。

逃げ道のない関係に、私は少しずつ追いつめられていきました。

対話ではなく、指導される関係。

わかり合うのではなく、従わせようとする関係。

それは、無言のうちに、私の心をコントロールする関係だったのだと思います。

言葉で封じられ、反論の自由を奪われたことで、私は気づかないうちに支配されていたのです。

あれはしつけや助言じゃなく、コントロールだった

夫の言葉は、最初は「私のためを思って」のアドバイスのように聞こえていました。

でも実際には、私が“自分らしくあること”を否定するものでした。

思いを伝えると「言い訳するな」と言われ、意見を述べれば「間違っている」と返される。

そうやって、私の中の“自分”が少しずつすり減っていったのです。

今思えば、あれは助言なんかじゃなかった。

私を黙らせ、従わせるための「コントロール」だったのだと感じています。

言葉は、時に人を育てるけれど、時に人を縛ることもある。

私が封じられた言葉の奥には、愛ではなく支配があった――

そのことに気づくまでに、私はとても長い時間をかけました。

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