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【第9章|夫がカウンセリングを受け始めた日】閉ざされた世界で、誰にも気づかれずに壊れていった私

私はずっと、自分が我慢しすぎなのかと思っていた。

でも今ようやく、はっきりとわかる。

あの空間は、牢屋だった。誰にも助けを求められない、閉ざされた牢屋だった。

あなた(夫)は、幼少期に辛い経験もしたかもしれない。

でも、そのあとには他の人との関わりや、逃げ場や、リセットできる時間もきっとあったと思う。

学校、地元の友達、外の世界。

きっと「気を紛らわせられる」選択肢があったんじゃないかと思う。

でも私は違った。

知らない土地、友達もいない場所で、あなたとふたりきりの生活。

孤立した環境の中で、毎日あなたの言葉に傷つきながら生きていた。

あの部屋は、ほんとうに、心が閉じ込められた場所だった。

あなたが日々口にしていた言葉の数々は、

きっとあなた自身が幼いころに親から浴びてきた言葉と似ていた。

でも私はそのコピーされた暴言を、誰のフォローもない中で毎日受け止めていた。

私はずっと、あなたは気づいていると思ってた。

「自分が何をしているのか」ぐらい、わかっているはずだと思ってた。

でも、話していくうちにわかったんだ。

あなたは、自分のしていることを意識すらしていなかった。

それが、本当にショックだった。

あなたは、ただされてきたことを繰り返していただけだった。

感情を抜いたまま、無意識に、まるで“脳死状態”で。

私がどんな表情をしていても、どれだけ涙を見せても、

きっとそこには何も映っていなかったんだと思う。

こんな状況に気づくのに、7年もかかった。

長かったし、しんどかった。

もしかしたら、あなたは今でもこの状況の“深刻さ”に完全には気づいていないのかもしれない。

カウンセリングに行くと話してくれたのは、正直、安心もしたよ。

ようやく何かが動き出すのかもしれないと思った。

でも――

まだ、私の心には届いてこない。

それは、あなたが「行く」と言ったからではなく、

私がここまで壊れてしまった年月の重さが、あまりにも大きいからだと思う。

目次

少しずつ、自分の心を回復させていきたい

幼少期やその後のあなたには、他にも受け入れてくれる人との関わり合いがあったのかもしれない。気分転換できる場所も、逃げ場も、選択肢も、少しはあったかもしれない。

でも私は、見知らぬ土地に引っ越してきて、知り合いもいない環境で、たった2人きりの生活が始まった。

そんな中で、あなたが幼い頃に受けてきたであろう言葉を、私は毎日のように浴び続けた。

「なんでそんなこともわからないの?」

「意味がわからない」

「おかしいよ、それ」

気づけば私は、まるで牢屋に閉じ込められているような感覚で暮らしていた。誰からもフォローされず、誰にも助けを求められないまま、あなたからの暴言を受け止め続ける毎日。

この“構造”の異常さに、あなた自身が気づいているのだと思っていた。

でも話を重ねるうちにわかったのは、あなたはそんなこと、意識もしていなかったということ。

自分がどんなことをしていたのか、どんな言葉を投げつけていたのか、あなたは想像すらできていなかった。

まるで思考を停止したまま、自分が受けてきたことをただなぞるように、私に繰り返していただけだったんだと気づいたとき、私は言葉を失った。

あなたの中に「意図」がなかったことが、かえって私を深く傷つけた。

だからこそ、この状況の深刻さに私自身が気づくまでに、7年という長い年月がかかったのだと思う。

もしかしたら、あなたは今もまだ、その重みを本当の意味で理解していないのかもしれない。

カウンセリングを受けていることを私に打ち明けてくれたことは、正直に言えば、ありがたいと思っている。

少しだけ安心もした。

でも、私の心にはまだ、その変化がちゃんと届いてきてはいない。

だから私は、まず自分自身を取り戻すことに集中したい。

少しずつ、少しずつでいい。

閉ざしてきた心の扉を、また開けていけるように。

無意識に我慢してしまうクセを、自分で少しずつやめていけるように。

まずは、自分の感情を、自分の痛みを、きちんと感じられるように。

私は、私の心を回復させていきたい。

そして、私自身の人生を、もう一度ちゃんと歩いていきたい。

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